17:決別

全てが終わり、落ち着きを取り戻した世界。
奈落王になったアレクは、プラチナの補佐の元、世界の復興に努めていた。セレスが倒れ、落ち着いたといっても、問題はまだ山積みに残っている。
まだ子供で参謀に甘やかされて育った自覚のある奈落王は、弟の負担にならないよう自分なりに努力をしていた。その成果か、最近では書類を1人で読めるようにもなった。
もちろんプラチナの助けが必要な時は多々ある。その都度、プラチナの部屋を訪れるのだが。
その度にやるせない気分になる。

長い髪を留める青いリボン。

胸元に輝く…月のネックレス。

プラチナは口にこそ出したことはなかったが、ジェイドへの想いがいまだ色濃く残っていた。
ジェイドの望む姿になろうとしていたプラチナ。
当の参謀は、プラチナを残してあっさりと逝ってしまった。もう教えることがないと言い残して。

窓辺でうつらうつらとしているプラチナに気付き、薄い毛布をかけてやる。
戦いに勝利した。仲間にも恵まれた。永遠の生命を手にいれた。

でも、あの堕天使がいないというだけで、どうしてこの世界はこんなにも濁って見えてしまうのだろう。



自室に戻ったアレクは、テーブルに置かれているカップに気付いた。ロードあたりが休憩用にとお茶を用意してくれたのだろう。
白と黒の、縞模様のマグカップ。
『アレク様、好き嫌いはいけませんよ』
縞模様の服を着て、縞模様のエプロン姿で、縞模様の食器に得意の料理を盛りつけながらそう言った己の参謀。
こんな縞ばっかり嫌だと言ったら泣きながら縞へのこだわりを訴えてきたサフィルス。
何を馬鹿なことを、と呆れた記憶が蘇る。
それはとても暖かくて、寂しい記憶。


アレクはそのマグカップを手にとると、そっと…地面へ落とした。
音をたてて砕け散るマグカップ。
あとでロードに怒られるな、と散る破片をスローモーションに見えながらぼんやり思った。


自分は優しい記憶に捕われてはいけない。
忘れたいわけではない。しかし、このままでは前に進めないのだ……今のプラチナのように。
自分は奈落王で、プラチナの兄だから…弟を導いてあげなくてはいけない。
時が止まったままのプラチナの時間を動かしてあげたい。
これから先の、永遠の未来のために。


「だからもう、お前からは、卒業…するね」




発売されることのなかった続編のPANDORAの2人が、プラチナが髪が長いままでジェイドのネックレスをつけているのに対し、アレクはシマシマ成分を一切捨てた服に変わっていたんですよね。
そこからの妄想です。プラチナのためにがんばるアレクが大好きです。