43:ぷに 『うしゃぎさん』の後日談です。

セレスが天上に戻っていってから数刻。プラチナは自分の手をじっと目つめ、物思いにふけていた。
白と金の、毛玉のような天使。
(気持ちよかった…)
「プラチナ様」
(もふもふしていたな…)
「プラチナ様!」
強く名前を呼ばれ、プラチナは自分の足に乗り上げている小さい存在に気付いた。
ジェイドだ。
まだ夜のため、2.5頭身の小さな身体のまま。座っているプラチナの足に上半身を乗せて、一生懸命プラチナを見上げていた。
「なにぼ〜っとしてるんです。まさかセレスのことを考えているんですか?」
「ああ…」
プラチナはまたあのもふもふとした耳を思い出し、溜息をついた。頬を淡く染めて息をつく姿に色香を感じる。(ジェイドフィルター)
自分の大好きなプラチナが、よりにもよってあんな憎たらしい兎のことを想ってそんな顔をするなんて、ジェイドには耐えられなかった。
「見た目に騙されないでください。あいつはああみえて、かなり性格悪いんですから」
2.5頭身の姿と性格が一致していないのはジェイドも同じじゃないかとプラチナは思ったが、黙っておいた。
そういえば、と、ふと思い出す。
セレスがジェイドに言い放った言葉。

『ぷくぷく』『ぽんぽこ』

たしかに今のジェイドはほっぺとおなかがぷにぷにしていて…とても触り心地が良さそうだった。
思わず手を伸ばす。




ぷに。




「!?」
プラチナに頬をつっつかれ、ジェイドが驚く。


ぷに。
ぷに。
ぷにぷにぷに。


硬直するジェイドをよそに、プラチナは夢中でジェイドの頬を指先でつっついた。まるで赤ん坊のような肌で、弾力があって、予想以上に触り心地がよかった。

「あの〜、プラチナ様?」
プラチナに触れられるのは嬉しいが、こういう触られ方はかなり複雑である。
しかし、うっとりした目で見つめられると手を払いのけることもできず、されるがままにしておいた。

「ジェイドも、気持ちいいな」
「それ誉めてるんですか?」
「それ以外に何があるんだ」
両方の掌でジェイドの頬を包み、薄く微笑む。
「―――――」
滅多に見ることのできない、プラチナの笑顔。


自分に触ることであの性悪ウサギを忘れられ、なおかつこんな笑顔を見せてくれるなら別にいいかなと。
なんだかんだでプラチナに甘い自分にジェイドは苦笑した。