51:寂しがり屋

彼は寝ている。
いつも寝ている。
放っておけばずーーーっと寝ている。
僕がここに来ているというのに、それが気にくわない。


最初は眺めていた。
とても幸せそうに寝ているから、彼の寝顔を見るのは好きだった。
…だけど、それにも限界があるんだよ?
声をかけても、つっついても
彼は全く起きる気配がない。
それがまるで僕の存在になんか気付いていないみたいで
我慢ができなくなった。


「いい加減起きる!」
寝ている彼の額に、思いっきりデコピンをしてみた。
「……………痛い」
さすがに痛かったのか彼は飛び起き、少し赤くなった額を抑えながら涙目で見上げてくる。

―――やっと見てくれた。

嬉しくて、僕は彼の胸に抱きついた。
「名前、呼んで」
「…?」
「早く!」
わけがわからないという風な彼を急かすと、苦笑と共に声が返ってきた。
「…セレス」



満足気に笑う僕の頭を撫でる彼の手が、とても気持ちいい。
「一体どうしたんだ?」
「君が悪いんだよ。僕が傍にいるのに起きないから」
「セレスは寂しがり屋なんだな」

…なんだって?

「…君にだけは言われたくないんだけど。僕が忙しくて会えない時、すごく落込むくせに」
「お互い様というやつだ」



言い返せないのが悔しい。

僕に気付いてくれない彼に、淋しさを感じたのは事実だから。