ボロボロ   (診断メーカーで出たお題「燕尾服で服の裾をひっぱる」)

「本気だしちゃうぜ!!」


イミテーションとの戦いの中、そう叫んだジタンが銀色の毛を纏った姿へと変貌する。
いつものピンク色の体毛に覆われた姿ではなく、着衣のままだ。

つい先日、コスモスから新しい服をプレゼントされたと、黒の燕尾服とマントを着たジタンが嬉しそうに話をしていた。普段の軽装とは違うイメージに、少しの間見とれてしまった。
ひらひらした服で戦うのは慣れないと言っていたが、よほど嬉しかったのか、その姿で戦いに赴く事は多かった。

そしてそのままトランスするのは今日が初めてで。

着衣のままではあるものの、所々破けていて、腹や足は完全に露出してしまっている。
スコールが何故だかいたたれなくなり視線を反らすのと、リバースガイアにより戦いが終わるのは同時だった。



周辺は静けさを取り戻し、少し離れた場所でもう一体のイミテーションと戦っていたバッツもじきに戻ってくるだろう、そう思っていると、後ろから服の裾を引っ張られる感覚があった。
「スコール…」
珍しく弱気なジタンの声に振り向くと、スコールは絶句した。
ジタンの衣服が、トランスした時に破れたままだったのだ。
マントは無傷だが、上着やズボンはボロボロのまま。トランスしていた時には毛で覆われてた部分も今は素肌が露出している。
「ど、どうしたんだその姿は!」
「わかんね。いつもは服は戻ってきてたのに…」
とにかくこれを着ていろ!と顔を真っ赤にしたスコールが自分のジャケットを脱いで渡す。
マントあるからいいのに…とジタンはぼやいたが、スコールがあまりに動揺するものだから、素直に受け取った。

「すぐにテントに戻っていつもの服に着替えろ」
「え、なんでだよ。バッツが戻ってからでも…、スコール」
応えを待たずにスコールはジタンを引っ張って歩いて行く。

(そんな姿を他の男に見せられるか…!)

ジタンは今の姿がどれだけの色気を放っているかわかっていない。特に、ジタンに気があるらしいバッツに見られるわけにはいかない。

そんなスコールの葛藤など知らず。

せっかくコスモスにもらったのに…と、ジタンは残念そうに呟いていた。