仮装とお菓子 2


スコールの指がスカートの布地を滑り、端へと辿りつく。
そのまま中へ侵入させると柔らかな素肌に当たり、慌てて手を離した。予想していた通り、ガーターと揃いの下着を身に付けているのだろう。
「おい」
手を離した事にジタンが抗議の声をあげる。
いつもならここでジタンから何かしらのアクションがあるのだが、今回は声を出しただけだった。なかなか進まぬ行為に、いつも翻弄させられているとばかり思っていた事が、実のところ上手く誘導し促されていたのだと思い知る。
ジタンが手を出さないと言った以上、羞恥で戸惑っていては何も進まない。スコールは気を取り直し、再度スカートへと手を伸ばした。

(………)

ジタンはスコールを見つめ過ぎないように、その一挙一動を眺めていた。あまり見すぎると中断されかねないからだ。
尻の辺りから下着の中に指を差し入れられ、くすぐったい。単に下着の脱がせ方が分からないだけなのだろうが、触り方がいちいちいやらしい気がする。

そもそもジタンは「悪戯していい」とは言ったが「抱いていい」とは言っていない。わざとそういう雰囲気に持って行ったのは否定できないが。
ただの『悪戯』であれば、変な髪型にしてみたり、支給された袋を括っていたリボンを尻尾に飾るなど、やり方はいくらでもあるのだ。
これも日頃の教育の賜物かと、ジタンは妙に関心していた。



ジタンの予想通り、スコールは下着をどうすればいいのか理解できずにいた。
下着とガーターベルトの紐が複雑に入り組んでいるように感じられ、このままでは引き下ろせないと判断してしまったのだ。
幸い、と言って良いものか分からないが、下着そのものは布が少なく、素肌を露にしている。腰の低い位置で着けられている下着は尻尾の下で終わっていた。スコールは差し込んだ指を下着の中でスライドさせると、尻尾を目指す。

その途中、日頃の行為の所為で敏感になってしまった部分を指が擦り、ジタンの肩が僅かに跳ねた。
尻尾に到達した手で、その付け根をやんわりと握り込む。
「……っ」
それにはジタンも過剰反応を示し、尻尾を立てて身体を震わせた。スカートが完全に捲り上がり、ひんやりとした外気が下肢に絡み付く。
尻尾の根元を扱かれ、空いている手で尻の弾力を確かめるように揉まれる。尻尾の毛を逆立てられる度にジタンの口からは小さな声が漏れた。
ジタンはスコールに跨がる様に膝で立っていたが、耐えかねてぺたりと座りこんでしまう。それでも付け根を刺激する手に尻を押し付けようと腰が浮いたり落ちたりするのは本能的なものだ。普段、付け根のみをしつこく刺激された経験のなかったジタンは、己の反応に対しそう言い聞かせる。

しかもスコールは下着の中で手をそんなふうに動かしているのだ。普段身に付けている物ほど伸縮性のない下着が後ろに引っ張られ、前が圧迫されてしまい強い刺激が生まれる。
これを計算ではなく天然でやっている。
こういう時のスコールはあなどれないと、息を乱しながらジタンは思った。


「なあ、ス、コール。キスしていいか?」
ジタンは僅かに頬を紅潮させ、乱れる息を隠しながらスコールにそう訊ねた。それにスコールは「約束と違う」と不服そうな顔をする。
「だから、していいかっ…て、聞いてるんだろ」
普段はキスをするのにいちいち許可を取ったりはしていない。スコールは成る程と頷き、するのはかまわないがジタンは何もするなと念を押した。

スコールは邪魔な付け牙を取り、ジタンへ向き直る。
いつもスコールから口を合わせる時は衝動的にしていた為、意識的にするのは緊張が伴う。しかし口付けを待っているジタンに見つめられるほうが心臓に悪いと意を決し顔を近づけて行った。ジタンは何も言わず素直に目を閉じる。
何度か唇を触れ合わせ、少し開いた口の中に舌を差し込む。
舐め易いようにという気遣いからか少し浮いた舌に、遠慮なく己の肉厚な舌を絡ませる。スコールを翻弄してばかりいるその舌が、やけに小さく感じられた。一回り以上ある体格差からいってその小ささは当たり前なのだが、冷静にその差を確かめられた事などそうそうない。
「は、…はぁ」
口付けを続けながら尻尾を刺激すると、口内でジタンの息が乱れるのを感じた。
小さな尻の肉を堪能していた手を前に回すと、小さな下着に狭苦しく納まっている膨らみに行き当たる。それを下着の上から上下に撫でると、「ひゃっ」という声を上げてジタンが口を離した。
「ん、んーー!!」
スコールがその口を追いかけて塞ぐとジタンはくぐもった声を出した。抗議を示す声なのはわかったが、スコールはそれを無視した。何をしても良いと言ったのはジタンなのだから。


前を揉み込みながら、尻尾を弄っていた手をその下にずらす。そしてそこにある窪みに指先を埋めた。
慣れているとはいえ、濡れていない指を入れるのは痛みが伴うのだろう。ジタンが僅かに眉を寄せる。
それに気付いたスコールは漸くジタンの唇を離した。散々大きな舌に呼吸を奪われてきたジタンがはぁはぁと肩を上下させて口から酸素を取り入れようとする。スコールはその口に指を差し入れた。
「うぐ…っ」
呼吸を整えている最中の暴挙にジタンは呻き声を上げた。スコールはその指を唾液で濡らし、すぐさま引き抜く。そして再度ジタンの下肢を弄ると、濡れた指を押し込めた。
「あぅ…あっ」
立て続けに与えられる刺激に、我慢できなくなったジタンは声を押し殺す事を諦め、その身を震わせた。


己の腕の中で可愛らしい声を上げて乱れるジタンに、スコールの息も徐々に上がって行く。自分が正気でいる時にはあまり見る事のできない痴態に興奮を覚えたからだ。スコールの上に座っているジタンが無意識に腰を動かしスコールの下肢を刺激して、それは更に加速した。


暫くしてスコールの肩にしがみ付いていたジタンの手が胸元に下がり、スコールが着ているシャツの合わせを引っぱり始めた。
「…おい」
ジタンから手は出さないという約束のはず。それはジタンもわかっているのか、興奮で目に涙を溜めながらスコールにこう訴えてきた。


肌に触りたい、と。


確かにスコールはジタンに比べ、露出はほとんどなかった。冷たい布の感触に不安を覚えたのだろう。
スコールが黙って先を促すと、ジタンは震える手でスコールの首元を飾るスカーフを取り払い、ボタンを外し始めた。
漸く全てのボタンを外し終え、露になった素肌に小さな身体をすり寄せる。やっと体温を感じる事ができたジタンは泣きながら満足気に喉を鳴らした。


その姿にスコールはズボンの圧迫が増したのを感じると共に、己の箍が外れる音を聞いた気がした。


ジタンも服は乱していない。
それに気付くと、途端にスコールもその素肌に触れたくなった。後ろを弄っていた手でジタンの腰を支えると、その身体を後ろに倒して体勢を変える。
胸元の薄い布に手をかけた所でワンピースの脱がせ方がわからない事に気がついたが、そんな事を模索している余裕は今のスコールにはなかった。

ぐっと服を掴まれたジタンが驚きに目を大きく開く。
「おい、スコ────」

そしてその名を呼び切らぬうちに、布の裂ける音がテント内に響き渡った。




「う、うそだろ…っ」
スコールは何の躊躇いもなく、服が破かれた事により現れた胸の突起に口を寄せた。それに歯を立てるとジタンが細い悲鳴を上げる。
自分が女性だったら破局ものの暴力だとジタンはスコールを睨みつけるが、散々高められた身体に新たな刺激が与えられ、そんな意識も拡散してしまう。
「ス、スコール…」
胸の突起を舐められ指で潰され、もう片方の手では下着越しに下肢に刺激を与えられ続ける。
「ひぁ、ああ…っ」
ここまで身体を刺激され続けているのに、決定打になるものをいつまで経っても与えられる事が無い。ジタンは半ば混乱しながら胸元にあるスコールの頭を抱きしめた。
「スコ…ル、もうやだ、頼むから…っ」
ジタンの身体を愛撫する事に夢中になっているスコールを、尻尾を使って遠慮のない力で叩いた。
それにようやく気付いたのか、スコールが顔を上げてジタンを視線を合わせる。

ジタンは顔を真っ赤にしてぼろぼろと涙を流していた。
吸われ過ぎた胸の突起は赤く色づき、スコールに足を割られているため開きっぱなしになっている下肢はがくがくと痙攣している。

破かれた服と相まってそれは目に毒というレベルではなかった。あまりの光景にスコールが目眩を覚えていると、ジタンが震える手を伸ばしてきた。

「はやく、いれて…」

はやく、お願いと繰り返し泣くジタンに、スコールは急いで己のベルトを緩めた。
そして膝を抱え上げた所でジタンの下着がそのままな事に気付く。しかし布地の少ないそれは大した障害にはならないだろう。後ろの布を横に引くと、難なく『そこ』は剥き出しになった。



下着をずらすだけというやり方もあまりといえばあまりだが、既に二人にはそんな事を思っている余裕などない。


足を抱え、スコールが腰を進めると、ジタンの口から一際高い声が放たれた。













「………」

冷静さを取り戻したスコールとジタンは、双方が羞恥に頭を抱えていた。
ジタンはここまで乱されるとは思っていなかったし、スコールも我に返った後に見たジタンの姿に驚愕していた。泣き腫らし、服を裂かれ───どう見ても強姦だ。
「わ、悪かっ…た…」
「…いや、俺がしていいって言ったんだし。それよりもさ…」


「これじゃもう、ハロウィンどころじゃないよな」


ジタンは菓子を食べてしまった上に衣装をダメにしてしまった。
スコールは一見問題ない様に見えるが、黒い服の所々が白濁で汚れている。二人の関係を知っている仲間が見たら何の汚れかなどすぐにバレてしまうだろう。



これでは到底外になど出られはしない。そう判断した二人はこの行事を───サボる事にした。
衣装がなくてもトランスすれば獣っぽくならね?と言い出したジタンにスコールが猛反対をした一幕もあるが。



「スコール、菓子食わせて」
お互いに腰が立たなくなってしまい、着替えは諦めた。ジタンはそのままにしておくわけにはいかないので、いつもスコールが着ているシャツを借りて着ている。
そして休憩を兼ねながら寄り添っていると、ジタンがそう言ってスコールに甘えてきた。
「俺にくれるって言っただろ」
「…まだ食べるのか」
既に自分の分を食べてしまっているくせにとスコールが呆れる。
「あんだけ動けば腹も減るって…。今日はスコールのものに手させないしさ、だからスコールが食わせて」
「………」

“自分から手を出さない”という約束をこんな所でまで実行しているジタン。
そんなジタンに菓子を食べさせてあげるのかやらないのかは、スコールが決めて良い事だ。



スコールは黙って自分の菓子袋を引き寄せた。
そして中身を取り出し一つつまむと、ジタンの口元へ持って行く。ジタンは嬉しそうにそれを口に含んだ。


きっと外では他の仲間達がハロウィンに興じていることだろう。一部の察しのいい者達によってこのテントには近寄ってこないであろうが。
女神が想定していた物とは全く違うであろうが、二人はその後、テント内での休息に勤しんだ。

スコールはジタンの食べている菓子を奪うという、悪戯を仕掛けながら。