媚薬89  ※みどさんのバレンタイン話の続きを勝手に書いたものです


力の入らない、自分よりも一回り以上大きな体を支えながら、ジタンはテントの入口の幕を開けた。
途端にスコールは膝から崩れ落ち、床に倒れ込む。
「大丈夫か?」
「………っ」
苦しげに息を吐き、上下する肩に、ジタンは舌打ちをして外の様子を窺った。
二人が聞き耳を立てている様子はない。どこかへと立ち去ったようだった。
「………ジタン」
「!」
外の気配に気を取られていると、ジタンは再び大きな腕に掴まった。
力任せに抱きしめられ息苦しい。しかしスコールが目の前の相手を『ジタン』と認識した上で求めてきているのだと気付かされる。それにジタンはもぞもぞと身体を動かしながら、自分を抱きしめるスコールの腕を尻尾でつっついた。
「とにかく、一回出しておけよ」
これが自分が仕込んだ薬なら、欲情するスコールを弄って楽しむ所だが、他者から与えられた物など腹立たしい事この上ない。
スコールの下肢に触れるとそこは既に硬く張り詰めており、ジタンはスコールのズボンを寛げると窮屈そうにしているそれを取り出した。
ぎゅっと握り込むとスコールの腕から力が抜ける。その隙に前に屈み込み、ジタンはスコールのものを口に含んだ。
「…っ」
「……ぐっ」
するとスコールに頭を押され、ジタンはえずいた。
スコールの暴挙に苦言を呈したい所だが、彼はとうに理性を手放している。そして彼は被害者なのだ。ジタンは頭を押さえる手を尻尾で払うと、手と口で性急に扱き上げた。
「うぁ、あ───っ」
すると程なくしてスコールはジタンの口内に精を放った。
ジタンはそれを躊躇なく飲み込み顔を上げる。手の中のスコールのものは未だ硬さを保ったままだった。
「大丈夫か?」
「……、すまない…」
一度出した事で僅かに理性を取り戻したらしく、スコールは苦しげに眉を寄せながらジタンに詫びた。
「気にすんなよ。…少し待てるか?」
「……、…」
再びスコールに余裕がなくなっていっている事に気付いたジタンは、急いで己の下履きを緩めた。そして狡猾剤代わりに傷薬を取り出し、尻尾の下の窄まりに塗り付ける。
全く解していない状態でスコールを受け入れるのは無理がある。スコールが待っていられる間に少しでも解しておこうと自ら指を挿れようとした、その時。急に視界が反転した。
「───!?」
床に引き倒されたジタンの視界に、天井と、獣のように目を光らせてるスコールの顔が飛び込んでくる。
スコールの手がジタンの胸元に伸び、ジタンは慌ててスコールの名を呼んだ。
「スコール、待てって…!」
しかしスコールはジタンの呼びかけに応じず、ジタンの胸元の飾りを力任せに引っ張った。
「スコール!」
ぶちりと鎖の切れる音に、ジタンが青ざめる。スカーフを取り払われ、ベストをはだけられ、露になった首元に顔を埋められたかと思うと強く吸われた。
「………っ!」
服を破られなかっただけましだろうか。何度か痕を作られた後に首筋を噛まれ、ジタンの身体がびくりと震えた。
そして半端に脱いでいた下肢に触れられたかと思うと、熱く張り詰めたものを一気に突き込まれた。
「うあっ、あ…っ!」
軟膏によって滑りの良くなったそこは切れる事はなかったが、鈍い痛みをジタンに与える。
「待…っ、あ、あ…!」
がくがくと身体を揺さぶられ、暴力的な刺激は快楽とはほど遠い。ジタンはできるだけ痛みを和らげるように、スコールの動きに合わせる事に意識を集中させた。
「───っ」
やがて体内に熱い液体が注がれる。最後までジタンのものは萎えたままだったが、ようやく終わった事にほっと息をついた。
「……ジタン…」
目をつぶって息を整えていると、スコールの手がジタンの頬に触れた。
薄く目を開けるとスコールの顔が近付いてくる事に気付く。唇に柔らかなものが触れ、ジタンは再び目を閉じた。
差し込まれたスコールの舌からは甘いチョコレートの味がする。先程とは対照的な優しい触れ合いを素直に受け入れていたジタンだったが、ある事を思い出した。



スコールが食べさせられたのは、チョコレートではなかったか。



「…あっ…!?」
気付いた時にはすでに遅く、ジタンは急激に身体に熱がこもるのを感じた。

まずい。

先程まで萎えていたジタンのものに硬くなり、スコールを受け入れている部分からは猛烈な性感が伝わってきた。擦られていた内部の痛みが別のものへと変わっていく。
「く…っ」
根元を締めつけられ、スコールは歯を食いしばった。
そして上半身を起こすと、ジタンの足に引っかかっている下履きを邪魔だとばかりに取り払う。
「待て、スコール待てって、…あっ!」
ぐっと腰を押し付けられ、ジタンの尻尾の毛が逆立った。

待てと言っても無駄だという事はわかっていた。そしてこの後、自分も同じように理性を手放してしまうのだろう。

「…っ、あいつら、あとでぜってーシメる!」
内部の圧迫感に乱れる息を抑える事ができないまま、ジタンは先を促すようにスコールの腰に尻尾を巻き付けた。