足癖が悪い!



濡れた髪から滴り落ちる雫をタオルで拭き取り、体の汚れと共に肩の力も抜け落ちたスコールは、ゆっくりと深呼吸をして顔を上げた。
冷たい川の水ではなく温かな湯で体を洗う事や、大きな鏡に映る自分の顔を見るのは久しぶりだった。稀に宝箱から入手することのできるコテージで過ごす事はたまの贅沢となっている。
この日スコールはジタンとの二人行動で、コテージを広々と使えるのは有難かった。髪の水滴をあらかた取り終え、スコールは浴室から部屋へと続くドアを開ける。
「出たぞ」
「ん〜〜」
ベッドの上からジタンの気の抜けた声が返ってきた。もぞりと動いた塊にジタンがシーツにくるまっているものだと思ったのだが、近くへ歩み寄ってみるとそれがジタンの物にしては大きすぎるシャツだと気付く。
「……おい」
それはシャワーを浴びる際にスコールが脱いだシャツだった。後で洗おうと畳んで置いておいたはずなのだが、浴室に行っている隙に持ち出してきたのだろう。
こうしてジタンがスコールの服をくすねるのは今に始まったことではい。スコールにとってはすでに見慣れた光景である。情けない話だが。
「返せ」
「ええー、もう少しいいじゃん」
そう言ってジタンはごろりと寝返りを打つと、羽織ったシャツの襟に口元を埋めた。それがシャツに付いている残り香を嗅いでいるのだと気付き、スコールの顔がかっと赤くなる。
いつもなら早々に諦めてジタンの気が済むまで放っておくのだが、このまま流され続けるのもいい加減癪に障る。スコールはジタンに伸ばしかけた手をぎゅっと握り込むと、意を決してベッドの上に膝を乗り上げた。
「スコール?」
ふいに視界を覆った黒く大きな影に、ジタンはシャツから手を放して顔を上げる。スコールは不思議そうに見上げてくる緑色の瞳につい動きを止めてしまうが己を鼓舞し、ジタンが包まっているシャツの端を掴むと、そのまま一気に持ち上げた。
「うわっ」
スコールの後にシャワーを浴びるための準備をしていたのだろう。シャツの下は下着だけを纏い、ほぼ裸だった。ふいに胸に色付くものが視界の端に映り怯みそうになるが、直視しない様に必死に視線を逸らしつつ、掴んだシャツを更に持ち上げ引き上げていく。
スコールでも首元にゆとりのあるシャツはジタンの頭から簡単に抜け、手首まわりで布の塊となる。そしてシャツの端を部分を掴むと、その手首を拘束するかのようにぐるぐるに巻いて結び付けた。
「あ、何するんだよ!」
「そのまま反省していろ」
ジタンの眉が困惑気味に寄せられるのを見て、ようやくスコールの溜飲が下がる。それに対し少しは暴れるかと思っていたジタンは拘束された腕を何度か振っただけで文句も言わず、己にのしかかってきたままのスコールを黙って見上げてきた。
「何だ……?」
そんなジタンと見つめ合うこと、数秒。視線に含むものを察しないスコールに対し、徐々にジタンの瞳に不満の色が見え始める。
「こんな事しておいて、何もしねえの?」
「何を……?」
「オレの上に乗って手首を縛って、そのまま何もしないなんてことはないよな?」
「―――!」
己の置かれた状況にようやく気が付いたスコールは、反射的に体を上げた。
羽織っていたシャツを脱がせ、下着一枚になったジタンを拘束し、同じく上半身裸の自分が組み敷いている。この状況を誰かに目撃されでもしたら、性的な意図はないと否定しても信じてもらないだろう。
「うわ、無意識かよ。たまにはやるじゃんって見直したのに」
「うるさい」
スコールは急激に上昇した体温で顔が染まるのを隠すように、片手で口元を押さえた。そんなスコールの様子を呆れ顔で見上げつつ、ジタンは手首を拘束されたまま肘を使って上半身を起こした。
途端に近くなった距離にスコールが僅かに身を後ろに引くと、ジタンの足が動く。それと同時に何かが股間を押してくるのを感じた。
「何だ!?」
「折角だし、この状況を有効活用しようと思ってさ」
そう言ってジタンは、意地の悪そうに口元を釣り上げる。スコールはそんなジタンの視線から逃れるように顔を逸らし、下腹部に視線を向けて唖然とした。
スコールの下肢に触れていたのはジタンの足の裏だった。ジタンの足の指先は、まだ柔らかい、ズボンの下に隠されている雄の形をつま先で確かめるように撫で上げると、器用に指を曲げて先端を握り込むような仕草をする。
「う……」
「硬くなってきてるじゃん」
(生理現象なんだから当たり前だ……っ)
そう叫びたくなるが、本当にそれだけだと言い切れるのか。そう口をつぐんでしまている間もジタンの足の指は器用に動き、素直に反応し始めている雄の感触を楽しんでいる。なんとも情けない光景だ。
「まだその気にならないか?」
ぐりぐりと下肢を揉まれ続け辛抱たまらずその足を退けようとするが、出しかけた手は素早く尻尾で弾かれてしまう。
(両手が使えないのにこの自由さは何なんだ)
弾かれた手と機嫌の良さそうに揺れる尻尾を交互に見ていると、意外なほどあっさりとジタンはスコールの下肢から足を離した。悪戯な足から解放されたことにスコールはほっと息をつく。しかし次の瞬間、視界に入ってきたのは至近距離にあるジタンの顔だった。
「――っ」
スコールが咄嗟に後ろ手をつくと、ジタンは体に傾斜が付いたのをいいことにその上に乗り出してくる。そして拘束されている腕をスコールの首の後ろに回すと、唇が触れそうなほどに距離を縮めてきた。スコールは反射的に目を瞑ったが、それが触れてくる気配はない。
唇にふっと吐息がかかる。ジタンが小さく笑ったのだ。
「そう簡単にしてやらない」
その唇は触れることなく顔の横を通り過ぎていった。唇の代わりに金の髪が頬をくすぐり、ジタンがスコールの肩に顔を擦りつけながら抱きしめてくる。
こうして甘えるような仕草をされることにスコールは弱い。直前にされた事を思えば何か含みのある行動だろうと分かっていてはいても、素肌が触れ合い互いの体温を分け合う感覚はいつもスコールを愉悦に浸らせる。それはジタンも同じのようで体をいっそう密着させて胸同士がくっつくと、満足そうに息をついた。まるで猫が喉を鳴らすかのような仕草だ。
シャワーを浴びたスコールの体温の高さが気持ち良いのか、全身で味わうように尻尾を腰に巻きつけてきた。それによりジタンの小さな体はスコールの膝の上ですっぽりと収まる。
擦り寄る素肌のさらりとした感触にすっかり絆されそうになった頃、背に回っているジタンの腕に力が籠もる。それと同時にジタンは跨いでいるスコールの腿の上で身じろぎをした。
そして足の間に押し付けられる、まだ柔らかなもの。
股間にこすり付けられたものが何なのか瞬時に判断はできなかったが、それがジタンの雄の象徴だと知るとスコールの顔の温度が再び上昇していった。
先ほどの悪戯で反応を示したままの部分に擦り付けられ、羞恥で頬が熱くなる。足でされた時ほどの刺激の強さはないが、布越しとはいえ互いのものを触れ合わせているという状況は十分に情欲を煽るものだ。ジタンも同じ心境なのか触れ合った部分が徐々に硬さを帯びていくのを感じる。
「う……っ」
更にぐりっと擦り合わせられるが、半端な刺激が却って辛い。スコールはジタンの腰に手を当てながら身を屈めると、少しばかり乱れている息遣いを耳元に感じた。
「これでも我慢できるか?」
そう言ってスコールに密着させていた体を少し離したジタンは余裕のある笑みを浮かべて見上げてくるが、その頬は僅かに紅潮していてジタンの興奮が見てとれる。
とどめとばかりに大きく腰を擦り付けながら尻尾で脇腹をくすぐられてしまい、スコールは大きく息を吐いて潔く白旗を上げた。
「…………できない」
無論、できないというのは我慢できるかどうかに対しての返答である。すでに互いに興奮状態にあるのなら、もう意地を張る必要もあるまい。素直に答えたスコールにジタンは少し意外そうな顔を見せたが、すぐに楽しげに目を細めて笑った。いつも悪戯を考える子どものような表情を向ける事が多いが、こんな時ばかりはその顔に色が付き、やけに妖艶に映るので目のやり場に困る。そんなジタンに魅入って動けずにいると、ジタンは行動に移さないスコールに対し首をかしげ、拘束された腕を主張するかのようにスコールの首にとんと当ててきた。
「こんな状態のオレにさせるかぁ?」
「あ……」
ジタンがあまりに自由に動くものだから、シャツで手首をくくり上げていた事をすっかり忘れていた。スコールが動き出す前にジタンは首の後ろに回していた腕を抜くと、縛られている手をそのままにスコールのズボンに触れてきた。そしてズボンのファスナーを器用に開けると、その下の熱を下着越しに握り込む。
瞬間、スコールの肩が震えるのと同時に硬さがいっそう増した。ようやく与えられた直接的な刺激に体が素直に反応を示してしまう。
「でか……」
ぽつりと、ジタンが小さな声でそう漏らした。スコール自身は特別大きいとは思っていないが、ジタンの手で掴まれていると体格差の対比でそう錯覚してしまいそうになる。実際、小柄なジタンにとっては十分大きいだろう。その細い腰で逞しい雄を受け入れ包み込む姿が脳裏に浮かび、下着に隠れた欲が布とジタンの手を更に押し上げていった。スコールの強い反応にジタンは少し驚いたようで、機嫌良く立っていた尻尾がふるっと揺れる。
下着をずらされ、布で圧迫されていた雄が外気に晒される。ジタンは身を屈めると、生々しく淫情を示すそれの先端に軽く口付けた。その口からちろりと赤い舌が覗き皮膚を湿らせていく。
「あ……っ」
スコールが思わず声を出すと、ジタンは雄に口を付けたままスコールを見上げてきた。淫靡な光景に目を離せずにいるスコールに、緑色の瞳が楽しそうに細められる。
情を交わす時のこうした力関係はいつものことだ。ジタンとて経験豊富なわけではないが、好意を態度で示す事についての積極性がスコールとは真逆なため主導権を握られがちである。そうして奥手なスコールの反応を楽しむのだ。
しかし、ジタンに流されまいと最初に行動を起こしたのは自分だ。スコールは大きく息を吐くと、睨みつけるような鋭い目線でジタンの姿を捉えた。
「うん?」
スコールの表情の変化に気付いたジタンが口を離す。その一瞬の隙を見て、スコールは拘束するシャツごとジタンの手首を掴み上げた。
「うわぁっ」
勢い良くその手をジタン自身の頭上まで持ち上げ、後ろに押せば、バランスを崩した体は意図も容易くベッドに倒れ込む。腕力と体格差ではスコールに分があるのだ。押さえ込んだ腕から抵抗する動きを感じるが、自由の利かないジタンの腕を片手で押さえる程度は容易だった。
「そうやって急にやる気見せるのビビるからやめろって……、あ、こらっ」
ジタンの下着を引っ張ると、シーツの上で尻尾の毛がふわりと逆立った。中から現れたジタンの雄も、先ほど触れ合っていた時に感じた通りに欲を主張している。それを見つめられるのはさすがに羞恥が伴うのか、隠すように太股を擦り合わせる仕草を見せた。ジタンにされたように握ってやればそれはすぐに手の中で育ち、そそり立っていくだろう。熱にうかされ肌を染める姿を想像して手を伸ばす―――が、スコールはそこには触れず、もっと下にある窪みに指先を触れさせた。今では雄を受け入れ慣れたそこに、爪を食い込ませる。
「―――っ」
僅かに体内に侵入した指にジタンは息を呑み、体を強張らせた。そのまま強引に入れられてしまうのかと思ったのだろう。
(さすがにそれは……)
勢いのまま挿入してジタンの体を傷付けてしまうのは本意ではない。スコールは皮膚を傷つけぬよう、ゆっくりと確認するように人差し指の先端を埋めた。
「ん……っ」
痛みはないようだが、異物感のほうが勝るのか、ジタンの眉間に皺が寄る。スコールはすぐに指を抜き、人差し指の腹で表面を撫でてみれば、そこはきゅっと収縮して蠢いた。
「くすぐったい……」
そうジタンが言うが、撫でられるのは気持ちがいいのか、指が窪みを擦る度に太股が震えている。こんなに小さな場所でよく性行為を受け入れているものだと再び想像を巡らせると、先ほどジタンが口を付けていた光景を思い出してしまい、下肢の己の欲が反応するのを感じた。
撫でる肌は乾いており、女性と違って体液で濡らすことはない。内側の粘膜だけでは滑りが心許なく感じ、スコールはベッドサイドにある、湯上りに使うつもりで用意していたヘアオイルを手に取った。
蓋を開けるために押さえつけていたジタンの手首を離したが、ジタンはそのまま大人しくスコールの動きを眺めている。ジタンの抵抗がないうちに細い足から下着を抜き、オイルを指に取った際に瞳が揺れたのは、この後にされる事への期待から来るものだろうか。
「冷た……」
指から溢れたオイルがジタンの腹に落ち、腰を伝ってシーツに染みを作っていく。オイルのひやりとした感触にジタンが吐息を漏らして身を捩れば、ぷくりと立った胸の飾りがスコールの目を惹きつけた。
「あっ」
ついオイルの付いた指でそれを撫でてしまうと、ジタンは体が震わせてスコールを見つめてきた。熱っぽさの中にやや呆れを含んだ視線の意味するものはさすがのスコールにも分かってしまう。「スケベ」と瞳が語っているのだ。
しかし直ぐにジタンの表情に緊張が走ると、何かに堪えるように体を強張らせた。スコールの指が股間の窄まりに触れたからである。そこに再び指を埋めてみれば、オイルの滑りで指は容易く中へ入り込んでいった。
「んう……っ」
先程よりも深く挿入した瞬間に指がきつく締め付けられるが、滑りのせいで内壁は指を排出できずに柔らかな肉を絡みつかせるような動きになってしまう。指先をくっと曲げ、入口の具合を確認しながら指を一本増やしてみれば、オイルで艶の出たジタンの脇腹がひくりと震えた。中を絞めるほどに入れられている指の感触を強く感じてしまうのかジタンはたまらず身をよじり、自由にならないままの腕を顔の横に置いてシーツを握りしめた。
腕を動かした瞬間に嫌がって体を押し退けられるかと思ったが、そうはせずに耐える様子を見せるのは続行を許している証である。スコールは内心それに安堵すると、指を抜いてジタンの片足を持ち上げた。
「入れるぞ」
「ん……」
スコールが自分の下着をずらし、昂った熱を滑る窄まりに当てがうとジタンの手に力がこもり、握り込まれている白いシーツにさらに大きく皺が寄る。張り出した先端を中へ食い込ませるとジタンは一瞬息を止め、深呼吸するように大きく息を吐きながら下半身の力を抜くが、それに反比例して腕や肩は緊張で硬直している。スコールが挿入しやすいよう配慮してくれているのだろう。
「あっ、ん……っ」
傷を付けぬようゆっくりと雄を挿入させるつもりがそれはオイルで滑り、中程まで一気に埋まってしまう。しかしジタンの口から溢れたのは色のある甘い声だ。普段は?剌とした印象が強く、恋人としての時間を過ごしている時もスコールを翻弄しがちなジタンがこうして疼きに堪えながら溶けた音を漏らすさまはやけに艶かしく、目と耳に毒だ。体温の上がった脚を腕に抱えて腰を進めれば、触れ合う部分の柔らかな肉がひくりと痙攣し、下肢の力を抜く余裕が消えたのか、捩じ込まれた雄の根本に食いつくかのように強く締め付けてきた。
「く……っ」
それにはスコールも堪らず身を屈め、大きく息をつく。ひときわ質量を増した欲が中を押し広げ、ひ、とジタンの小さな声が聞こえた。スコールは一度閉じた瞼を開けてその顔を見る。縛られた腕を横に流しているせいで顔の半分は隠れてしまっているが、繋がった下半身に視線を送るジタンの瞳はとろりと細められ、上気してピンク色に染まっている頬は彼の悦楽を目で見てとれた。スコールが腰を引いて雄を半分引き抜けば緑の目が潤み、オイルを纏わせた粘膜が収縮する。
「あ、あっ」
そして再び奥まで突き入れると濡れた音が耳を犯した。ジタンの視線につられてスコールも視線を落として見れば、小さな体に対し大きすぎる雄が埋め込まれているのが見える。体重をかけてしまえば小柄な肢体は潰れてしまうのではと危惧してしまうが与えられる快感に抗いがたく、弾みをつけて腰を動かせば包み込む内壁が搾り取るような動きで絡み付いてきた。
「ス、スコール」
半身の感触に集中していると、切羽詰った声で名前を呼ばれた。ジタンの顔に視線を向けると困ったように眉を寄せている。
「前、触ってくれよ……」
シーツの上に毛の逆立った尻尾を泳がせながら、恥ずかしげにそう伝えられた。先ほどわざとジタンの雄に触れるのを避けたせいで、そこは直接的な刺激を与えられていないのだ。中を擦り上げる度に入口が痙攣する動きをしていたが、触れられないままでは吐精できずに体が辛いのだろう。
スコールが動きを止めてジタンの腹を撫でると、ようやく望むものが与えられると思ったジタンが安堵の息をつく。スコールは汗ばんでいるジタンの肌を手のひらで味わいながら撫で下ろした。
「……っ! そっちじゃない……っ」
途端にジタンが焦り声を上げ、スコールの手がら逃げるように腰を捻ろうとした。しかし下肢を貫かれたままで思うように動かすことも叶わず、却って中を刺激する羽目になりジタンの背がしなる。
スコールが触れたのは、前の雄の部分―――ではなく、後ろの尻尾の付け根だ。
続けざまに与えられている性感により逆立ちっ放しの毛のふわりとした感触が心地良い。肌と尻尾の境目を指先で撫で、根本を握り込むと、尻尾の先端がびくりと震えた。元々敏感な部分ではあるようだが、行為中は特に快感を拾い易くなってしまうようだ。痛い程に強くなった締め付けにスコールは息を弾ませる。
「は……っ、このままいけるんじゃないか?」
「無茶、言うな……っ」
ふと思い立って漏らした言葉にジタンが非難の声を上げた。
「このままっ、て……」
ジタンも想像してしまったのか、頬を染めて考え込んではかぶりを振った。その仕草の愛らしさに、絡みつかれたままの雄が著しく硬くなっていく。
「で、でか……、うあっ」
尻尾を掴んだまま律動を再開すればスコールも限界を感じて内壁を擦り上げるのを止めることができず、最後に強く奥を突いた瞬間、ジタンの体が大きく痙攣するのと同時に搾り取られるような感覚に襲われた。
「あ――――っ」
「う、あ……っ」
腰を密着させながら中に精を放つと雄を包んでいた肉は脱力し、余韻を味わうかのように痙攣を繰り返した。その動きに再び頭をもたげぬように己の熱を落ち着けていると、ベッドのシーツにぽたりと白い液体が滴る。
「う、うそだろ……」
まだ中から抜き去っていないため、その精液はスコールのものではない。ジタンが前に触れられることのないまま達してしまったのだ。
ジタンは肩で大きく息をつきながら、自分の体の反応に驚愕した様子でシーツを握る手を離す。腕を縛られたままに放心し、体を投げ出している肢体につい魅入っているとそれに気付いたジタンにじろりと睨み上げられ、スコールは慌てて視線を逸らした。
そんなスコールの様子にため息をつきつつ、ジタンはベッドに横になったまま手首を擦るような仕草をする。すると両手首に絡まったシャツがいとも簡単に解け、するりとベッドの上に落ちた。
「……わざとそのままにしてたのか?」
「これくらいオレが解けないはずがないだろ、……んっ」
中に埋めていた雄を引き抜くと、中から精液がこぼれる。その感触にジタンが身を震わせた。己の股間で二人分の精が混ざるのを感じるのか、はあとため息をついて足でシーツを掻く。
「燃えるかなーと思ってそのままにしていたんだけどさ、まさかあんな事されるなんてさ……」
「う……」
最後まで前に触れなかった事を言っているのだ。始めこそ意地悪のつもりで言った事だが、早々に気遣う余裕を無くしてしまった。ジタンもまさか触れられぬまま吐精するとは思っていなかったのか、忙しなく尻尾を揺らして顔の熱が引かない様子だ。
互いに別の理由で気まずい空気が流れる。ジタンの体を見下ろす体勢のまま黙っていると、ジタンは毛並みが乱れてしまった尻尾でスコールの手をつついてきた。
「とりあえず、シャワー浴びたい」
「……そうだな」
スコールは体を流したばかりだが、すっかりお互いの汗で汚れてしまっている。ベッドから足を下ろすと、体の力が入らないらしいジタンがスコールに手を伸ばして己を運ぶよう催促をした。
「しっかり洗ってくれよ」
抱き上げられたジタンは自由になった腕でスコールにしがみつき、耳元でそんな事を囁く。言葉とともに吹きかけられた息に、本当に洗うだけで済ませるつもりでいるのかと疑ってしまう。
「尻尾で背中を撫でるのをやめろ」
「……あれだけ弄ってたくせに」
毛先で背骨のラインをなぞるように撫で上げられると、発散したはずの熱が再び灯りそうになってたまらない。そう思って口にした言葉だが、散々根元に触れた後なのでジタンに返す言葉もない。
ジタンはスコールの首元に頬を擦り付けると、匂いと体温が心地良いのか、背を撫でた尻尾を機嫌良く振った。スコールは素肌をくすぐる金の髪の感触に湧き上がるものを堪えながら浴室のドアを開ける。
二人で入浴するには適しているとはいえない広さの浴室にふたつの影が消えていく。まだ始まったばかりの夜の空に、スコールの情けない声が響いては消えていく事になるのは時間の問題だった。